二重人格の男子主人公に殺される運命の妻に憑依した。よりにもよって結婚式当日に憑依したせいで逃げることもできなかった。

それでも殺人魔の人格である《キッド》に会わなければ何とか生き残れると自分に言い聞かせてたのに。

そんな私をあざ笑うかのように。
初夜、キッドが私を訪れた。

「それで寝たふりのつもりか？すーっごく上手いな。三数える間に起きなければ―」
「お、起きました！」

彼は生きたければ自分の別人格、大神官《セニエル》を口説いて見ろと言った。私がセニエルの一番大事な存在に、弱点になるまでは生かしておくと。

だからと言って目標達成後には私を解放してくれるのかと？キッドはセニエルを踏みにじるために期を見て私を殺すと言い出した。

今すぐ殺されるか、それとも後で殺されるか、と。

＊＊＊

朝になると、セニエルが涙をぼたぼたとこぼした。

「全部、僕が、悪いんです」

生き残るため、適当に彼を慰めた。私が生き延びれる方法は、彼に近づくふりをしながら隙を見て逃げることだけだったから。